【専門家が解説】こんなにある!株式の種類について
『株式』の取得=会社の所有者になるという認識をお持ちの方は多いと思います。では、株式にいろいろな種類があることはご存じでしょうか?また、種類があることは知っているが、具体的には何が違うのかあまり知らない方なども多いのではないでしょうか?
本日のコラムの内容は株式の種類について軽く触れてみたいと思います。
株式の原則
株式には原則といわれるものがあります。
それが株主平等の原則と株式譲渡自由の原則です。
会社法第109条第1項 (株主の平等)
3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同行の株主が有する株式を同項の権利について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
上記は会社法からの抜粋になりますが、109条1項にて株主平等の原則について定められています。
この条文を簡単に要約すると・・・『同じ内容の株式の株主なら、その持株数に応じて配当金や残余財産分配、株主総会の議決権などを平等に扱ってね』(1株当たりの配当金や議決数を変えちゃダメだよ)
ということが明文化されているわけです。
会社法第127条 (株式の譲渡)
株主は、その有する株式を譲渡することができる。
そして、株式譲渡自由の原則についても会社法127条に自由に譲渡することができると明文化されております。
しかし、会社経営において、これらの内容が会社にとって不利に働く場合があります。
例えば、株主平等の原則であれば、すべての株主に対して株式総数に応じた平等な配当金を出したくない場合(単なる出資者と実際に経営に携わっている役員株主の配当金の比率を変えたい、など)や特定の株主に対しては株主総会の議決権を与えたくない場合なども考えられますよね。
株式譲渡自由の原則であれば、身内経営している会社の株式を親族の誰かが勝手に見知らぬ誰かに売り渡してしまい、結果として見知らぬ誰かが会社経営に介入してくる、なんて事態も想定できます。
株式の原則によって会社に対して不利益が起こりうる可能性があるからこそ、それを避ける手段として定款で定めることにより株式の内容に制限をかけたり、一定の条件を付した株式を発行することができるようになっています。
種類株式とは
冒頭でも書いたとおり、株式にはいいろいろな条件や制限、権利を付したいくつかの種類が存在します。それらの異なった性質を持つ株式のことを総称して種類株式と呼びます。
一つの会社が、内容の異なる複数の株式を発行することも認められています。
普通株式
普通株式とは、株式に対してなんら制限が課されていない、もっとも一般的な株式になります。
株式市場で出回っている株式の大半は普通株式であり、株式と聞いてまず初めに浮かんでくるものがこの普通株式になるかと思います。
当然、株主が自由に売買することができます。
譲渡制限株式
譲渡制限株式については聞きなじみがある方も多いかと思います。
こちらの株式は売買や譲渡を行う際に会社の承認(承認方法として株主総会や取締役会が一般的ですが、定款の定めにより代表取締役等の承認で足りるようにすることも可能です)を得る必要があります。
つまり株式を勝手に売り買いされたり、譲渡されることを防げるということです。
『株式譲渡自由の原則』によって自社株が知らないうちに知らないところへ売り出されて、知らない者が会社の所有者になることを防ぐ目的で発行されることが多いです。
ちなみに、『非公開会社』という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、
会社が発行している株式の全てが譲渡制限株式である会社のことを非公開会社(株式の売買が簡単に行えないため)
譲渡制限株式以外の株式を1株でも発行している会社のことを公開会社と呼びます。
取得請求権付株式
株主が会社に対してその所有する株式の取得(買取りなど)を請求することができる株式になります。
中小企業の株式を所有している人がその株式を売却して現金化したいと考えたとしても、基本的に株式上場していないような企業の株式というのは買い手を見つけることがなかなかに難しいものです。さらにそこに譲渡制限などが付されていたとしたら株式の買い手先を探すのは相当大変であることは想像に容易いと思います。
そういった場合でも、取得請求権付株式であればその株式の買取を会社に対して請求できるので株主も安心できますよね。
取得条項付株式
会社が株主の同意を得ることなく、一定の事由が生じたことを条件として株式を取得できる条項が付与された株式です。取得の対価に関しては、金銭での支払いの他に社債やほかの種類の株式を対価とすることも可能です。
字面としては取得請求権付株式と似ていますが内容は全く異なります。
取得請求権付株式は株主が会社に対して買い取り請求を行うのに対し、取得条項付株式は会社が株主に対して行います。
取得条項付株式の活用方法の例としては、
□【会社が定めた日の到来】を一定の事由として定めておき、ある株主の持つ取得条項付株式を強制的に取得し、対価として【議決制限株式】を渡す、などがあります。
これにより、特定の人物が期日到来以降に株主総会で議決権を行使することを防ぐことができます。
□【株主に重大な不正があった場合】を一定事由に定めることによって、不正を行った株主から株式を買い取ることによって経営から排除する目的での使用も考えられます。
□【株主が死亡したとき】を一定の事由に定めることによって、株主が死亡したあとに株式を買い取ることによって、株式が被相続人に渡ることを防ぐこともできます。
優先株・劣後株
株式を所有していると得られる権利の中に配当金や残余財産の分配がありますが、優先株や劣後株を所有しているとそれぞれ普通株式よりも優先的に配当や残余財産の分配が受けられる株式を優先株。普通株式への配当や残余財産の分配が行われた後でないと権利を主張できない株式を劣後株と呼びます。
議決制限株式
株主総会で行使できる議決権に制限を付けた株式になります。制限の内容としては、特定の議案についてのみ議決権を行使できないといった一部のみの制限はもちろん、すべての株主総会の議決権を無くすことも可能です(定款への定めが必要)
一般的には経営に関与させたくない者や経営に興味がなく、配当金や株式売買益などを目当てとしている者向けの株式となりますが、事業承継などで利用されることもあるようです。
ただし、公開会社の場合には、会社法において以下の条文があります。
会社法第115条 (議決制限株式の発行数)
種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式の数が発行済株式の総数の二分の一を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決制限株式の数を発行済株式の総数の二分の一以下にするための必要な措置をとらなければならない。
議決権制限株式が過半数を超えると、実質的に少数の普通株主が会社の意思決定を独占することが可能になります。これは株主全体の利益に反する可能性があるため、株主総会における公平な意思決定を確保する必要があるため、このような制限がかかっています。
ちなみに……二分の一以下にするための措置を講じる必要があるとありますが、それによって発行した議決制限株式が無効になるわけではありません。
全部取得条項付株式
先ほど紹介した【取得条項付株式】と似ている名前ですが、その内容は全く異なるためご注意ください。
全部取得条項付株式とは、会社が株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の三分の二の賛成が必要)によってその種類の株式の全てを会社が取得することができる旨を定めた株式になります。
全部取得条項付株式の使用例としましては、
□敵対的買収の阻止→あらかじめ株式を全部取得条項付株式にしておくことで、万が一敵対的買収を受けそうになったとしても、会社がその株式を強制的に買い戻すことが可能になります。また、対価を金銭で支
払う以外の方法として、議決制限株式を対価とすることで敵対的買収者が経営に関与することを防ぐことも可能です。
□100%の減資や少数派の排除→発行している普通株式をすべて全部取得条項付株式に変更(定款変更が必要です)することにより、全株主から強制的に株式を回収し、再度ゼロから会社の出資者を募ることがで
きるため、会社の立て直しであったり、会社にとって不都合な株主の排除に利用されることもあります。
また、会社法172条1項の定めにより、特別決議によって決議された取得対価(金額や数など)に不満がある株主は裁判所に対して、取得価格の決定の申し立てを行うことが認められています。
拒否権付株式
株主総会で決議された事項について拒否権を有します。(正確には…特定の事項を可決させるためには、株主総会の決議で可決された後、拒否権付株式の株主だけで構成される種類株主総会の決議が必要とする定めを付すことができます)
根拠となる条文は会社法第108条第1項8号です。
会社法第108条1項8号
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
株主総会の特定の決議事項について拒否権付株式による種類株主総会の決議が必要である旨を定めておけば、例え株主総会で賛成多数になった決議だとしても、拒否権付株式の株主の決議(拒否権付株式の株主が一人だけであれば事実上独断)で株主総会の決議を否決とすることができるという非常に強い権利を持った株式です。
代表取締役・取締役の報酬額決定や選任・解任、会社の組織変更、会社の財産譲渡などに対する決議を対象としておくことで、行き過ぎた内容の決議や会社が不利になる決議に対して、拒否権付株式の株主がストッパーとなることで会社経営をコントロールすることができます。
取締役・監査役の選任権付株式
取締役・監査役の選任権付株式を持っている株主だけで構成される種類株主総会で取締役・監査役の選任をすることができる種類株式になります。
根拠となる条文は会社法第108条第1項9号です。
会社法108条1項9号
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査当委員会設置会社にあっては、監査当委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九条及び第百二十条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。
特定の株主のみが取締役・監査役の選任を行うということは支配権濫用のリスクもあるため、指名委員会設置会社ではない非公開会社のみでしか定めることができない種類株式になります。
まとめ
ここまでご覧いただいたように、一口に株式といっても様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
どのような株式をどのぐらい発行するのか、誰にどの種類の株式をどの程度持たせるのか、これから起こりうる可能性のある事態に備えてどのような種類株式で対策するのか、株式の設計は非常に複雑な作業となります。
しかし、そこをしっかりと考えることによって会社に起こりうる可能性のある大きなリスクを回避できたり、コストカットが出来たり、円滑な会社経営が繋がったりと企業にとって非常に有益なシステムとなることは間違いありません。
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