【専門家が解説】株主総会と取締役会の違いについて

新NISA制度などにより一般の方でも株式投資を行い易くなった昨今、”株主総会”という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

株主総会についてはこちらのコラムで詳しく解説をしておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。

さて、株主総会と同じくらい耳にする機会があるのが”取締役会”というものです。

この取締役会というものが何なのか、株主総会とはどういう違いがあるのか、本日はこの辺りをテーマとしてコラムを書いていこうかと思います。

株主総会とは

株主総会についてはこちらのコラムでまとめておりますので、今回のコラムでは簡潔にご説明します。

株主総会とは簡単に言えば、会社の出資者である株主が集まり、会社の経営に関する重要な意思決定をする会議のようなものです。

全ての株式会社は株主総会を設置しなくてはならず、さらに会社法第296条1項の定めにより、必ず毎年1度は株主総会を開催しなくてはいけません。

会社法第296条 (株主総会の招集)

 定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならない。

2 株主総会は、必要がある場合にはいつでも、招集することができる。

3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

上記、会社法第296条第1項を根拠条文として、すべての会社は決算後一定期間内に必ず株主総会を開催しなくてはいけません。

また、会社法第296条第2項を根拠条文として、定時株主総以外でも必要があれば株主総会を開催することができます。これはニュースなどでたまに耳にすることがある”臨時株主総会”です。

このように株主が集まったり、委任状を用いたりして会社経営に関する重要な意思決定を行うものが株主総会です。

取締役会とは

取締役会とは、会社の全ての取締役で構成される社内の意思決定機関になります。

全ての株主会社が必ず設置・定時開催しなくてはいけない株主総会と異なり、特定の会社では取締役会を設置しないという機関設計も可能です。

ただし、すべての株式会社は1名以上の取締役は必ず設置する必要があります。

具体的には…

・公開会社

・監査役会設置会社

・監査等委員会設置会社

・指名委員会等設置会社

これらに該当する場合には必ず取締役会を設置しなければいけません。これは会社法第327条に規定されています。

会社法第327条 (取締役会等の設置義務等)

 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一 公開会社
二 監査役会設置会社
三 監査等委員会設置会社
四 指名委員会等設置会社

逆にいえば、上記のどれにも該当しない会社であれば取締役会の設置は義務ではありません。

ちなみに、取締役会を設置するためには3名以上の取締役が必要になります。

株主総会と取締役会の具体的な違い

株主総会、取締役会、どちらも会社経営に関する事項の意思決定機関であるという点では同じです。では両者はどのような点で異なってくるのでしょうか。ここでは具体的に比較してみたいと思います。

株主総会と取締役会の違いを比較すると、以下のようになります。

項目株主総会取締役会
定義会社の最高意思決定機関会社の業務執行を決定・監督する機関
構成メンバー株主(出資者)全取締役(3名以上)
役割会社の基本的な方針や重要事項を決定業務執行の決定や取締役の監督
決定事項定款変更、役員選任・解任、利益配分(配当)など具体的な経営戦略、業務執行の方針など
開催義務定時株主総会(年1回以上)、臨時株主総会(必要時)取締役会設置会社は3ヶ月に1回以上開催義務
権限の範囲会社の根幹に関わる重要事項のみ業務執行に関する幅広い決定が可能
会社法上の義務全ての株式会社で設置義務あり取締役会設置会社(大会社や公開会社)にのみ義務

定義

株主総会は会社の最高意思決定機関とされています。

会社法第295条 (株主総会の権限)

 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会、その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

会社法第362条 (取締役会の権限等)

 取締役会は、すべての取締役で組織する。

2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の遂行の監督
三 代表取締役の選定及び解職

3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子 
 会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

会社法第295条第1項を根拠条文とし、株主総会は原則的に会社経営に関連するあらゆる事項について決議をすることが出来ます。これが最高意思決定機関と呼ばれる理由です。

ただし、会社法第295条第2項及び会社法第362条第2項を根拠として、取締役会を設置している会社については

■会社の業務執行の決定

■取締役の職務の執行の監督

■代表取締役の選定及び解職

は取締役会で決定する事項となっており、それ以外の事項を株主総会で決定することになります。

また、取締役会は日常的に行う業務については代表取締役などに委任(委任された人の一存で決定)することができるのですが、以下のような重要事項については委任が出来ず、取締役会での決定が必要になってきます。

■重要な財産の処分する場合や譲り受ける場合

■大きな借金をする場合

■支配人その他の重要な使用人の選任・解任する場合

(会社法上の支配人とは、【会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する使用人】のことです)

■支店や重要な組織を設置・変更・廃止する場合

■募集社債に関する重要事項を決める場合

■会社やその子会社の内部統制システムを整備構築する場合

■会社が役員に対して損害賠償請求ができる場合において、会社が損害賠償責任を免除する判断をする場合

イメージとしては、日常的に経営判断を迫られる会社経営において、スピード感を重視するために重要度がそこまで高くない判断は取締役会で行い、株主にも影響がでるような大きな議案については最高意思決定機関である株主総会で判断を行うという感じでしょうか。

特に株主総会でしか決議が行えないと定められている内容も数多くあるため、会社経営においてもっとも強い力を持っているのが株主総会であることが分かると思います。

構成メンバー

株主総会を構成するのは議案に対する議決権を持つ株主です。(持ち株の種類や数によっては株主総会で議決権を行使できない場合があるため、一概に全株主が議決に参加できるわけではありません)

対して、取締役会は全取締役で構成されます。そして、取締役会を設置するためには最低でも3名の取締役が必要になるため、必然的に3名以上で構成されることになります。

◆開催義務

会社法第296条 (株主総会の招集)

 定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならない。

2 株主総会は、必要がある場合にはいつでも、招集することができる。

3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

株主総会は定時株主総会を年に1回開催しなくてはいけません。

また必要があるときには臨時株主総会を開催することになります。

会社法363条 (取締役会設置会社の取締役の権限)

次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を遂行する。
一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

2 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

対して取締役会の開催義務については会社法第363条第2項に規定がある、3か月に1回以上取締役会を開催し、報告をしなければならないとされています。

会社法上の義務

株主会社において株主総会の設置は義務となっており、会社の規模や株主数に関わらず必ず開催しなくてはいけません。

■公開会社

■監査役会設置会社

■監査等委員会設置会社

■指名委員会等設置会社

対して、取締役会は上記に該当しない会社であれば設置の義務はないため、設置の有無は任意となっています。

議決権

株主総会においての議決権数は基本的に株主の持株数=出資額に比例して増えますが、取締役会の議決権数は1人につき1議決権となります。

そして、株主総会とは異なり、取締役会では議決権の代理公使は認められていないため、本人が直接決議に参加しなくてはいけません。

決議要件

株主総会の決議を行う際、その方法にはいくつかの種類が存在します。

・普通決議

・特別決議

・特殊決議

・特別特殊決議

(各種決議の違いについてはこちらのコラムでまとめていますのでぜひご覧ください)

取締役会の決議方法は原則として決議に加わることができる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数で決定します。

定款の定めがあればこの要件を厳しくすることができますが、軟化させることはできません。

会社法第369条 (取締役会の決議)
 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、決議に加わることができない。

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

議事録の作成

株主総会・取締役会どちらとも開催した場合には議事録の作成が義務付けられています。

(会社法第318条第1項・会社法第369条第3項)

まとめ

細かい点でいえばもっとたくさんの違いはありますが、おおまかに株主総会と取締役会の違いは以上になります。

どちらも会社経営に関する意思決定をする機関であるという点でいえば似ていますが、その性質はまったく異なるものであるということがご理解いただけたと思います。

新NISA制度などにより株式投資に触れる機会が増えた方々も多い昨今、会社法に関する正しい知識を持つことは非常に重要なことです。

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