【専門家が解説】バーチャル株主総会とは? 

新NISA制度を機に株式投資を始めてみた方も多いのではないでしょうか。

株式投資を行い、一定期間まで株式を保有し続けていると、その会社の株主総会に関する案内が届くかと思います。

株式会社の最高意思決定機関であり、株主が持つ議決権を行使できる大事な場でもある株主総会。

そんな株主総会のスタイルが徐々に変わり始めています。

今回のコラムでは、そんな株主総会のバーチャル化やメリット・デメリットについて……会社設立&中小企業支援を専門としている行政書士が解説します。

株主総会に関する解説はこちらのコラムで行っています。まずは株主総会について知りたい方はこちらをご覧ください。

従来の株主総会

株主総会とは会社経営に関する重要な事項について、株主の意見を聞き、決議をする大事な会議です。

現在の主流である株主総会(リアル株主総会)では、物理的な会場を用意し、そこに株主を集めて会議をするという形式をとっています。

しかし、株主を収容できる程大きな会場のレンタル代や維持費はバカになりませんし、株主総会の規模が多きければ大きいほどそれに付随する準備費や人件費等が嵩みます。

さらに株主側としても、株主総会の会場が遠方である場合には出席することが困難となってしまうこともよくある話です。

そして、近年では感染症の爆発的流行があったばかりであり、密集した会場に大多数の人間が集まることも不安要素の一つとなってしまいます。

このように、従来の株主総会にはいくつもの欠点があります。

バーチャル株主総会

会社法第298条 (株主総会の招集の決定)

 取締役(省略)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

会社法第298条第1項1号の規定により、株主総会を招集するときは【株主総会の日時及び場所】を株主に通知しなくてはいけないという条文が根拠となり、開催場所の定めが必要となっています。

そして、この【場所】というのは、「株主が質問し説明を聴く機会を確保するため、物理的に入場することができる場所でなければならない」というのが経済産業省の見解でした。

物理的に入場できる会場は確保しなくてはいけない、しかし遠方の株主でも参加できるようにしたい。そのような背景から生まれたのが【ハイブリット型バーチャル株主総会】です。

ハイブリット型バーチャル株主総会

ハイブリット型バーチャル株主総会とは、物理的な会場を用意して株主に来場してもらいつつ、インターネットなどによりオンラインでも参加することが可能な形態を取っている株主総会の総称です。

この形態では、会社法上の「物理的な会場を用意しなくてはいけない」という条件をクリアしつつ、「来場が困難な株主も参加できる」というメリットがあります。

ハイブリット型バーチャル株主総会はさらに2つの種類に分類することができます。

ハイブリット(参加型・出席型)バーチャル株主総会

参加型とは、オンラインで参加している株主が審議の場で発言したり、決議を行うことができない、いわば観戦者の状態となる形式です。

参加型の場合、オンライン参加している株主は、法律上の『出席』扱いとはなりません。

参加型で株主総会に参加する株主が議決権を行使したい場合には、事前に書面や電磁的方法などで事前に議決権を行使しておくか、委任状を用いて代理人に株主総会当日に会場に赴いてもらって、議決権を行使してもらわなくてはいけません。

出席型とは、オンラインで参加している株主でも審議の場で発言をしたり、決議にも参加することができ、通常通り参加しているのと大差ない形式になります。

出席型の場合、オンライン参加している株主は、法律上の『出席』扱いとなります。

ハイブリット型バーチャル株主総会のメリット・デメリット

◆メリット

・参加形態を選べるため、遠方の株主でも株主総会に参加しやすい。

・オンライン参加者が多ければ、会場の規模を縮小できるため、会場コストを下げられる。

・感染症対策になる。

◇デメリット

・オンラインでも株主が参加できるシステムを構築するためにコストが掛る。

・サイバー攻撃に備えたセキュリティ対策をしなくてはいけない。

・オンライン出席者のなりすましの可能性がある。

・開催に慣れていないと進行に手間取る

このようにハイブリット型バーチャル株主総会にはメリットもあればデメリットもあります。まだまだメジャーとは言えない方式であるため、開催を検討する際にはしっかりと検討を行いましょう。

バーチャルオンリー株主総会

バーチャルオンリー株主総会とは、ハイブリット型とは異なり、物理的会場を用意せずに完全にオンライン上でのみ行う株主総会です。

これまでは会社法の規定により、物理的に入場が可能な会場がないと開催できなかった株主総会ですが、2021年6月に施行された改正産業競争力強化法により、

会社法の特例として『場所の定めのない株主総会』に関する制度が創設され、バーチャルオンリー株主総会の開催ができるようになりました

要件

バーチャルオンリー株主総会が開催可能になったとはいえ、どの企業でも簡単に行えるというわけではなく、開催にはいくつかの要件があります。

株式上場企業であること

金融商品取引法第2条16項に規定する金融商品取引所(いわゆる市場)に上場されている株式を発行している株式会社でなくてはいけません。

(非上場会社は現状、開催不可)

事前に経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けることが必要

事前に経済産業大臣及び法務大臣の承認を得るためには以下の手続きが必要となってきます。

①経済産業省による事前相談

②申請書の作成及び添付書類の準備

③申請書及び添付書類の提出

④経済産業省と法務省において、提出を受けた申請書と添付書類
について審査

⑤審査の結果、両⼤⾂の確認をすることとなった場合には、両⼤⾂
の確認書を交付

※事前相談から確認書の交付までは3か月程度かかるため、時間に余裕をもって準備しましょう。

『場所の定めのない株主総会』を開催できる旨を定款に定めること

バーチャルオンリー株主総会を行う場合には事前に定款の変更が必要です。

定款の変更には株主総会の特別決議を必要とします。

定款についてはこちらのコラムで詳しくまとめていますので、気になる方はぜひ読んでみてください。

招集決定時に省令要件に該当している必要がある

  • 通信方法に関する事務の責任者の設置
  • 通信障害などに関する対策方針の策定
  • インターネットの使用に支障がある株主の利益確保に配慮する方針の策定
  • 株主名簿に記載・記録されている株主数が100人以上である

バーチャルオンリー株主総会を開催するまでにはこれらすべての要件を満たす必要があります。そもそも上場していない会社では開催することができません。

Q:実際に場所の定めのない株主総会を開催する予定はないが、定款変更だけ行いたい。その場合でも両大臣の確認を得ることは必要か。
A:必要です。

Q:災害や感染症の拡大など、場所の定めのない株主総会を開催する場合を限定した定款変更を行う予定。その場合でも、両大臣の確認を得ることは必要か。
A:必要です。

Q:定款について、原本証明は必要か。
A:不要です。

Q:登記事項証明書について、現在事項証明書を提出すべきか、それとも全部履歴事項証明書を提出すべきか。
A:どちらでも差し支えありませんが、可能な限り容量を小さくした上で御提出いただくようお願いいたします。

Q:可能な限り早く確認を得たい。確認書の交付までどれくらい時間が掛かるのか。
A:通常、事前相談から正式申請までおおよそ1ヶ月~1ヶ月半程度を要しております。定款変更をされようとしている株主総会の招集決定の取締役会開催時点までに両大臣の確認を得ていただくためには、その取締役会開催予定日のおおよそ2ヶ月前には経済産業省に御相談いただく等、余裕を持って御準備を進めていただくことが望ましいと考えております。

Q:確認申請書の「⒉⑵通信障害に係る方針」として定める方針の内容や、「2.⑶デジタルデバイドの株主への配慮として定める方針」の内容について、近日中に場所の定めのない株主総会を開催する予定が無いため、採用するシステムなどが具体的に決まっていない。どうすれば良いか。
A:採用するシステムが決まっていないような場合は、例えばシステムやマニュアルを構築・策定するに当たって何を重視するかといったような考え方を記載いただくことも考えられます。いずれにせよ、将来場所の定めのない株主総会を開催された際にどのようなことをご検討することになるかを考えながら記載いただくことが望ましいと考えられます。

場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度 (METI/経済産業省) ”よくあるご質問”より引用

バーチャルオンリー株主総会のメリット・デメリット

バーチャルオンリー株主総会のメリット・デメリットはハイブリット型バーチャル株主総会と通じる部分もいくつかありますが、それぞれを以下にまとめておきます。

◇メリット

・会場代や人件費等、会場の準備に掛るコストを大幅に削減できる

・遠方の株主でも参加が可能

・感染症対策になる

・今後、規制が緩和される可能性がある

デメリット

・開催には事前に経済産業大臣及び法務大臣の「確認」が必要

・非上場企業では開催不可

・オンライン開催の技術面やセキュリティ面の準備が必要

・まだ日本ではバーチャルオンリー株主総会を導入している企業は少ないため、実績があまりない

・オンライン環境がない株主やオンライン機器の操作が苦手な株主は出席しづらい

まとめ

バーチャルオンリー株主総会に関連するニュースとして令和7年2月10日、 オンラインのみの「バーチャルオンリー株主総会」を開催する要件の緩和などを柱とした会社法の改正が10日、法制審議会に諮問されました。

これにより、現在の要件が緩和され、今後バーチャルオンリー株主総会を開催の開催がより容易になる可能性があります。

リアル株主総会、ハイブリット型バーチャル株主総会、バーチャルオンリー株主総会、いずれにもメリット、デメリットが存在するため『どの形態が一番良い!』というものではありません。

しかし、IT技術が進化し続けているこれからの時代、選択肢をより多く持てるということはそれだけ企業戦略を増やせるということに繋がります。

各企業にとって最適な形はそれぞれ異なりますので、各社でより会社を成長させることができる選択肢を選んでいくことが重要になります。

行政書士事務所オータムは静岡県浜松市を拠点としており、会社設立や中小企業支援に特化しています。

会社経営や法令関係などでお悩みの際はぜひ弊所へご相談ください。

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